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 怪獣のゴジラは都市や文明を嫌う。だから自然豊かな場所が生息地になる。1994年に封切られた映画「ゴジラVSスペースゴジラ」の山下賢章監督(旧串良町出身)が生前、エッセーに記している。

 なるほど、作品の架空の島は真っ青な海に囲まれて、亜熱帯樹林が茂る。その一部が撮影された奄美大島は、ゴジラにぴったりの環境である。

 「奄美・沖縄」の世界自然遺産登録が決まった。政府が2003年に候補地に選んでから18年の長い道のりだった。ユネスコの諮問機関から登録延期勧告を受け、政府が再推薦した経緯もあり、自然保護関係者らの喜びはひとしおだろう。

 多くの固有動植物が息づく「生物多様性」が評価された。奄美市の写真家浜田太さんは、その象徴的存在のアマミノクロウサギを35年間撮影してきた。子育てなど生態研究にも取り組む。「森林開発が盛んだった頃を思うと夢のよう」と感慨深げだ。

 登録地は生態系の厳格な保護が求められる一方、観光地として知名度は高まる。最初の世界遺産の一つであるガラパゴスは、急な観光地化で一時は危機遺産になった。

 希少種の交通事故や外来種対策など課題の多い奄美では「登録は環境保全の始まり」との声が聞かれる。先のエッセーによると、ゴジラは奄美の島影を安息地にしているらしいから、島民らのこうした意気込みを心強く思っているに違いない。