( 8/1 付 )

 福岡市博多区の商店街・吉塚市場の一角にあるお堂に、高さ2メートルの黄金の釈迦(しゃか)像がある。伏し目に長い耳、細長い手指にエキゾチックな雰囲気が漂う。今春、姉妹都市であるミャンマーのヤンゴンから運ばれた。

 市場の「リトルアジアプロジェクト」の一環だ。JR博多駅から北へ一駅の吉塚地区はアジア系の若者が多く暮らす。仏教を信仰する彼らの「手を合わせる場所が欲しい」との声に応えた。週末には参拝者でにぎわう。

 ミャンマーで国軍のクーデターが起きて半年になる。強権的な弾圧はやまず、治安部隊の発砲などで子どもを含む900人以上が犠牲になった。反発する市民も武装化し内戦の様相を呈する。

 釈迦像の堂守を務める78歳の瀧野隆さんは、もどかしい思いで見守る。10年前にヤンゴンに移住し、貧困から親に置き去りにされた子どもたちが暮らす孤児院を支援してきた。新型コロナウイルス感染拡大で一時帰国中に政変が起こった。

 現地では感染者が爆発的に増え、医療用酸素の不足が深刻化しているという。瀧野さんの元には窮状を訴える連絡が相次ぐ。関心を高めようと、孤児院出身者が作るマスクの販売や写真展を企画する。

 福岡の像の黒い瞳は、強い意志をたたえているように見えた。平和でより良い世界を目指す五輪は後半戦に入った。祭典の陰で困難に立ち向かう国々から目をそらしてはなるまい。