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 食事したい。お金を下ろさなきゃ。トイレにも行きたくなった…。初めて行った場所でこんな時、頼りになるのが案内用の絵文字「ピクトグラム」だ。

 東京五輪開会式で、その絵文字がいきなり動きだした。軽快なリズムに合わせ、パントマイムの第一人者のHIRO-PONさんらが全身で競技種目を次々と表現した。独創的と海外の人の心もつかんだ。

 五輪では前回東京大会で初めて導入された。手掛けたのは、美術評論家の故勝見勝さんが集めたデザイナーたち。競技や会場施設を紹介するため、世界の誰もが分かる「共通言語」が必要だった。

 「TOKYOオリンピック物語」(野地秩嘉(つねよし)著)によると、関わった全員が完成後に著作権を放棄した。これを促した勝見さんは「社会に還元するべきだ」と訴えた。利益に固執しない判断が今日の広がりにつながったようだ。

 開会式の余波か、さまざまな自作ピクトグラムが会員制交流サイト(SNS)上をにぎわす。本紙もきのう鹿児島弁版を紹介していた。人が斜めになって肩を壁に寄せる「なんかかる」(よりかかる)など一目で伝わり、くすっとさせられる。

 これらに比べ、コロナ下の政府が出すメッセージの何と分かりづらいことか。首相は「人流は減った」と言い切ったが、都市部で増加傾向にある地点は少なくない。クエスチョンマークの付いた絵文字が浮かんでくる。