( 8/9 付 )

 人生で大切なのは勝つことではなく闘うことである-。フランスの教育者クーベルタンは言った。勝利至上主義を戒め、努力する過程を重んじたのは、スポーツによる人間形成を目指した「近代五輪の父」らしい。

 新型コロナウイルス下の東京五輪が幕を閉じた。まずは奮闘した全ての選手に拍手を送りたい。1年延期や移動制限で代表に選ばれるまでにも多くの困難があっただろう。

 スポーツの力はテレビ越しにも伝わってきた。メダルの色や順位に関係なく、最後まで諦めない姿に励まされた。その一方で、開催に至る途上で噴出したさまざまな問題が頭をよぎり、満足感に浸れない。

 新規感染者数は急拡大し、大方の不安が現実となった。政府は有効な手だてを示せず、医療崩壊の危機が迫っている。どんな見通しを持って、誰が開催を判断したのか、うやむやにしてはならない。

 選手らの要望で試合開始時刻や会場の変更が相次いだ。そもそも真夏の東京開催に無理はなかったか。振り返れば、招致合戦は贈収賄疑惑も残した。準備責任者らの言動によって、ジェンダーや人権を巡る意識の低さも世界に知られるところとなった。

 これらの反省点に頬かぶりし、メダルの数だけ誇ることをクーベルタンも望むまい。検証し、導き出される教訓こそが東京五輪のレガシー(遺産)に違いない。祭典は終わった。後始末はこれからだ。