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 作家の檀一雄が「かごしまの味」(南日本新聞社編)の序文で書いている。「鹿児島は、日本の味を語る際に、真先に、指を折って数えあげなくてはならない」。

 豚骨やカツオの腹皮、あくまきを例に、父祖伝来の知恵が詰まった味と絶賛している。素朴で野趣あふれるのが薩摩の郷土料理の特色だろうが、豪華で晴れやかに、そして惜しみなく手間を掛けるのが酒ずしである。

 地酒に浸したご飯と、タイや小エビ、タコ、タケノコ、シイタケ、さつま揚げなどの具材を交互に重ねていく。黒と赤の漆で塗られた、すしおけに盛られる様は淡彩な日本画のように美しい。

 戦後、鹿児島市長を務めた勝目清さんは、帰郷した洋画家の有島生馬、作家の里見弴(とん)兄弟に酒ずしを振る舞った。その時、3人の合作で<冬の日にふるさとに来て思はずも母なつかしきすしの味かな>と詠んだという。

 きょうは盆の入り。誰にでも懐かしい古里の味があるに違いない。酒ずしのように手の込んだ料理でなくても、その家ならではの味付けであれば、帰省客に喜んでもらえるはずだ。

 鹿児島県商工会連合会によると、お盆の土産には丸ぼうろや紬マスク、お茶、豚みそなどが人気らしい。コロナ下の夏、今年も帰郷を見合わせた親族らに鹿児島の香りを届けてはどうだろう。家族や旧友に久しく会えないもどかしさを少しは和らげてくれるかもしれない。