( 8/19 付 )

 7月末に出た「ペシャワール会報」にアフガニスタンでの新しい工事の報告が載っている。現地代表だった中村哲さんがおととし、凶弾に倒れて以来初めて取り組む事業である。現地スタッフは「臆することなく進む」と誓う。

 2000年からの大干ばつで苦しむ人々に心を痛めた中村さんは、「緑の大地計画」を始める。砂漠に用水路を引き農業を根付かせることを目指し、壊れても容易に直せるよう日本の伝統工法を用いた。担い手が育っているのが心強い。

 そのアフガンでイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した。米中枢同時テロ後20年も駐留した米軍が撤退を始める中、攻勢に転じてわずか10日の急展開である。離陸する米軍機に群衆が取りつく様子から混乱ぶりが伝わる。

 タリバンはかつて、イスラム教を厳格に解釈し、女性の人権を抑圧するなど恐怖政治を敷いた。新たな政権づくりに向け、女性の政治参加など融和姿勢を示すが、時代が逆戻りしないかと心配する声が強いのは無理もない。

 バイデン米大統領は「米史上最長の戦争を終わらせる」と撤退を正当化し「われわれの使命は民主国家をつくることではない」と述べた。あまりに無責任ではないか。

 中村さんは「裏切られても裏切らない誠実さこそが人々の心に触れる」と現地に根ざして活動した。世界の指導者に同じ志がなければ、アフガンの和平は遠のく。