( 8/20 付 )

 重りを入れた網がさあっと銀色の波を打って広がり、池の表面をたたく。ぱしゃり、ぱしゃりと音が立つ。霧島市国分広瀬に江戸時代から伝わる盆明けの精進落とし行事「はんぎり出し」である。

 辺りはもともと遠浅の海だった。薩摩藩が産業開発の一環で新田を干拓し、海水調整のために潮だまりを造った。管理する水守(みもり)が漁業権を与えられたのが、行事の起源とされる。潮の干満で水門から流れこむ魚を狙う。

 はんぎりとは、半分に輪切りした馬の飼い葉おけのこと。くくりつけたいかだの上でバランスを取りながら投網し、取れたエッナ(ボラの子)などを入れていく。昭和30年代は30~40のいかだが出ていたそうだ。年々減って今年は6枚だった。だが27歳の女性が盛り上げた。

 塩川夏美さん。えんじの作務衣(さむえ)の肩に網を担ぎ上げ、体をひねって投げ打つたびに見物客から「よし」と声が飛んだ。大役を終えて「何度も練習して臨んだ。楽しかった」と息を弾ませた。

 昨年まで、父親がいかだに乗る一人だった。広瀬自治公民館の館長は「娘に投げさせてみようかなとおやじが言っていたけど、冗談かと思っていた」と話す。「女性は、はいめっ(初めて)。伝統の良か後継者ができた」

 新しい風が吹く。マスクの下で皆が笑っていた。昼前、全てのいかだが池から上がる時を見計らっていたかのように、ざあざあ降りが来た。