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 数年前、ラジオ番組「夏休み子ども科学電話相談」で、5歳児がユニークなお願いをした。「星座の唐揚げ座をつくりたい」

 天文の専門家のアドバイスはこうだった。「毎日同じ時間に空を見て、あのお星さまとこのお星さまを結ぶと唐揚げの形になるかなって探してみて」。無数の星の中に形が浮かび上がる瞬間を味わってほしかったのだろう。

 星座は心理学で使われる言葉でもある。人生の出来事をつないで星座(物語)が見えれば、生きる意味がふに落ちる。きのう始まった南日本書道展に入賞した霧島市の鏡橋千佳子さんにとっては、10歳で掛けられた言葉が起点の星だった。

 高知から鹿児島へ引っ越す際、書道塾の先生が「書だけは続けて」と託した。でも遠ざかっていた。全てに自信を無くした20代にふと思い出し、教室へ通い始めた。その初日、師が言う。「接筆(線と線の接し方)さえうまくなれば、あなたの字は素晴らしい字になる」

 自分の可能性に光が差した。以来、精進を続ける。65歳になった。「人が何か道具一つを持って生まれてくるなら私は筆だったのかも」。南日本書道展は今回29回目の出品で、自己最高の秀作賞に選ばれた。

 会場のかごしま県民交流センター(鹿児島市)には入賞入選作350点余りが来月5日まで展示してある。一点一点が、出品者それぞれの努力が生んだ星の一つに違いない。