( 8/28 付 )

 初めて見る光景なのに、以前も見た気がする。こんな不思議な感覚にとらわれたことはないだろうか。心理現象の一つとされ、デジャビュ(既視感)と呼ばれる。

 このところ、イスラム主義組織タリバンが全土を制圧しつつあるアフガニスタン発のニュースに既視感がつきまとう。首都カブールの空港から自国民や協力者を国外退避させようとする米軍機の映像が、ベトナム戦争末期のサイゴン陥落とだぶる。

 ベトナムを南北に分断した戦争で、米国が支援した南の首都サイゴンに北軍が進攻したのは1975年だった。米国大使館の屋上に着陸したヘリで大使館員らが慌ただしく脱出する場面は世界に報じられた。米国にとって苦々しい記憶のはずだ。

 今回、カブールには自衛隊機も派遣された。だが、国外退避を待つ邦人らはタリバン戦闘員の検問や押し寄せた群衆に阻まれ、空港に近づけない。付近では過激派組織の自爆テロもあり、緊迫の度合いは増すばかりだ。

 この混乱を見れば、バイデン米政権の軍撤退戦略はあまりにもお粗末だったというほかない。民主化を期待したアフガン国民にすれば、見放されて銃の前に放り出されたも同然ではないか。

 他国に派兵し、引き際を誤る。46年前のサイゴンと今のカブールが描く「米国の敗北」という構図が既視感の正体だろう。超大国がなぜ同じ過ちを犯すのか、不思議でならない。