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 Uの字を逆さにして、地面に立てたような地図記号がある。中には縦線が引かれている。誕生して日が浅く、あまり知られていないかもしれない。

 災害の記録が残る石碑や供養塔の位置を示す「自然災害伝承碑」だ。中の縦線は碑文を表す。国土地理院が2年半前、教訓を地域住民らに広めようと作った。

 地図に載る基数は徐々に増え、既に千基を超えた。鹿児島県内分は1914(大正3)年の桜島大正噴火、93(平成5)年の鹿児島市の8・6豪雨など22基ある。ただ、伝承碑の対象は全国で数千に上るとされ、自然の恐ろしさを見せつけられる思いがする。

 インターネット上の地理院の地図で記号をクリックすれば、碑の写真と被害の概要を確認できる。現地に足を運べなくても記憶を呼び起こす効果は大きいだろう。学校などで活用を進めて先人が刻んだ記録を地域の防災に役立てたい。

 いつ、どこで起きるのか分からないのが災害である。民俗学者の赤坂憲雄さんは以前、「みな『災間』を生かされている。逃げ場はない。備えるしかない」と本紙に寄せた。現在は過去と未来の災害の間にあるという警鐘が重く響く。

 7月には静岡県熱海市で発生した土石流が多くの人命を奪い、鹿児島も北薩を中心に記録的大雨に見舞われた。伝承碑の対象をこれ以上増やさないため、災間に何をすべきか考えたい。きょうは「防災の日」。