( 9/3 付 )

 弟のいたずらに機嫌を損ねた姉は、洞穴にこもる。そのうち外で愉快なダンスが始まり、みんなの笑い声がする。のぞき見したところを引きずり出された。

 古事記の「天(あめ)の石屋(いわや)」の筋書きである。こもった姉は太陽神の天照大神(あまてらすおおみかみ)だから世界は真っ暗になり、あらゆる災いが起こった。そのため、ダンスで気を引いたのだ。

 踊り子が足を踏みならした舞台は、奈良の天(あめ)の香山(かぐやま)から根こそぎ掘り出してきた「五百津真賢木(いはつまさかき」で造られた。つやつやした常緑樹のサカキを神棚に祭るようになった起源の有力説とされる。再造林をなりわいにする霧島市の若者集団が、漢字で「榊」と書く、神木の栽培に乗りだそうと準備を始めた。

 新たな収入源を確保したいとの思いからだ。既に軌道に乗る鹿屋市の業者の元で研修を積んでおり、同行させてもらった。杉林に植えられた樹齢20年ほどのサカキの枝を切り取る。葉や芽のつき具合に目配りしながら選んでいた。

 作業場では出荷用に枝をそろえ、丁寧に水洗いして束ねていく。新型コロナ下で休業に追い込まれる飲食店は多いが、神棚の供え物の交換は欠かさないのか「売り上げに影響はほぼない」という。

 若者たちのサカキ参入が、うまくいきますように。そしてサカキの舞台で演じられた踊りの霊験が現世にも届き、人々の不安を鎮めてくれないものか。神にすがる気持ちが、日ごと強くなる。