( 9/9 付 )

 早春の薩摩・大隅路で健脚を競う県下一周駅伝は、市郡対抗の12チームが心一つに取り組む姿が感動を誘う。選手やスタッフのひた向きな努力が伝わるからに違いない。

 本番は5日間だが、選手たちは日々地道な練習を重ね代表入りを目指す。高校生から社会人まで練習会や合宿で競い、励まし合い、実力を付けていく。68回の歴史を重ねる中で、多くの名選手や指導者を生んできた。

 春松千秋さんはそんな中でも頭一つ抜けていた。選手としては長年、川辺のエースとして活躍し、一度はチームを離れたものの45歳で復帰し49歳まで走った。監督としては2012年に川辺を21年ぶりの総合優勝に導いた。

 とはいえ、出身地の川薩で走った高校1年時のデビューは散々な結果だった。郷土入りで長丁場を任されたが、調整に失敗して大ブレーキとなる。「自己管理の大切さに気づき、成長するきっかけになった」と後に語っている。

 監督としての名采配が記憶に残る。苦しそうな若手に「そうだ、そうだ、快調、快調」と声を掛けて褒める一方で、ベテランにはラップタイムなどを簡潔に伝え、余計なことは言わない。選手心理を熟知した対応は見事だった。

 おととい63歳で旅立った。県下一周に通算37回出場。選手として計74区間966.6キロを走り、区間賞を25個獲得した。まさに「ミスター駅伝」と呼ぶにふさわしい生涯だった。