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 「八十八歳。加齢とともにこちらの足を止めようとする障害も生じてくる」。森村誠一さんの著書「老いる意味」は老人性うつ病の体験などを率直に記したエッセーだ。

 「人間の証明」をはじめとする社会派ミステリーで知られる作家に思うように文章をつづれない日が訪れた。脳から言葉がこぼれ落ちるような感覚を味わう。つなぎ留めるためにノートやチラシの裏に文字を書いて壁に貼り付け続けたという。

 きょうは「老人の日」だ。2003年に「敬老の日」が第3月曜日に移ったのに伴い制定された。祝日でなくなったからか、老人の響きに違和感があるからか、あまり定着していないように感じる。

 平均寿命が延びたのは喜ばしいが、その分自らの老いと向き合って生きなければならない時間も増えた。思うように体が動かなかったり記憶が衰えたりすると、森村さんでなくとも昔の自分と比べて落ち込むことがあろう。

 杉浦佳子さんは、東京パラリンピックの自転車ロード2種目で日本勢最年長50歳での金メダリストとなった。「最年少記録は更新できないけど最年長はまた更新できる」のコメントに、自身の可能性を信じる力がにじむ。

 森村さんも「まだまだ頑張っているじゃないか」と自分を褒める大切さを説く。私たちは誰しも自分史上最高齢の毎日を生きている。そう考えると年を重ねるのも少し楽しくならないか。