( 9/19 付 )

 名人といわれた落語家の六代目三遊亭圓生は、本題に入る前の「まくら」の名手としても知られた。名高座の一つ「百川(ももかわ)」では、祭りの自慢話をユーモアたっぷりに語り、聴衆を引き込んだ。

 「あたくしの郷里(くに)の祭りにはこうゆう特長があるんで…まァ、ぜひひとつ、見ていただきたい」。これもお国自慢と続けた名人の言葉通り、誇りたい催しは日本各地にある。それなのに肝心の祭りが開けない。コロナ下の悲哀である。

 薩摩川内市の川内大綱引も2年続けて中止となった。本番を迎える予定だった22日、新田神社で神事だけ行うという。今年はコロナ終息も祈願する。400年を超える伝統を守るためにも、市民の願いが届いてほしい。

 コメの収穫が終わった田んぼを回り、わらをもらい受けるところから大綱引の準備は始まる。数百本の長縄を練り、祭りが近づくと大綱に仕上げていく。「2年もないと作り方を忘れる」。関係者がもらす嘆きは切実だ。

 悪い話ばかりではない。祭りを舞台にした映画「大綱引の恋」は、今月初めに全国ロードショーを終え、来月上旬には米国ロサンゼルスの日本映画祭で上映される。

 上半身裸の男たちがぶつかる綱引きの醍醐味(だいごみ)が盛り込まれた作品である。スクリーンを通して伝わる「祭り自慢」が、多くの人を魅了するはずだ。いや、綱引きだけに引っ張って来ると期待して再開を待ちたい。