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 人生100年時代といっても若者にはピンとこないかもしれない。実感としては折り返し辺りで不安や疑問が頭をもたげてくる。100歳を迎えるとはどんな心境なのか。

 こんな思いの人たちが手に取るのだろう。間もなく98歳になる作家佐藤愛子さんのエッセー集「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」が鹿児島でもベストセラーになっている。

 130万部を超えた「九十歳。何がめでたい」の続編で、身辺の出来事や世相をユーモラスに切り取る筆は健在だ。ありのままに老いを受け入れる姿勢はすがすがしく、定年が近づく身にはポンと背中を押された気分になる。

 戦後の食糧難に話は及ぶ。「悲痛な思い出は笑い話になった。それを語る私も笑っている。笑い終えて憮然(ぶぜん)としている」。今の飽食の時代へのやりきれなさがにじむ。膝を打つ戦争世代は多かろう。読者は暮らしを顧みずにいられない。

 100歳以上は増え続け、県内では本年度中に991人が仲間入りする。本紙連載「語り継ぐ戦争」にも100歳前後の証言が相次いでいる。コロナ下で面会はままならないが、人生の先輩方には貴重な体験や長寿のヒントを思い付くままに語ってほしい。

 佐藤さんは孫の勧めもあって断筆を宣言した。ねぎらいの言葉が浮かぶそばから、満100歳の境地も読みたいと期待してしまう。どうか無理はなさらずに。きょうは敬老の日。