( 9/23 付 )

 気候がよく、心身ともに快適な秋を「天高く馬肥ゆ」と言い表す。空が澄みわたり、爽やかで食欲も増進するという例えである。俳句の季語にも「秋高し」とある。

 実際、この時季の空は高く感じる。高いところにできる雲が多いことに加え、空気が澄んで上空まで見通しが利くようになるからだ。秋を感じさせるうろこ雲は高度5000メートル以上に現れ、青空に白い小石を敷きつめたように美しい。

 巻積雲の別名で「うろこ雲が出ると雨」という言い伝えがある。高空で空気がゆっくり上昇するときに発生し、大気の状態が不安定になっている。天気が崩れる前兆とするのは理にかなう。

 こうした雲や風の動きから天気を予想することを観天望気という。鹿児島なら「桜島に雲がかかれば雨」など地域ごとに語り継がれてきた。古くから積み重ねた経験に基づく知識は、暮らしを支える財産として大切にしたい。

 吉田拓郎さんは名曲「明日に向かって走れ」で、「流れる雲を追いかけながら 本当のことを話してみたい」と歌った。空を流れゆく雲には、人を優しくする魅力があるのかもしれない。心に空を見上げる余裕を持てれば、素直になれそうな気がするから不思議である。

 きょうは秋分。これから日ごとに秋は深まる。何かとうつむきがちになる昨今、季節は自然とともに一足ずつ移ろっていく。ひとまず空を見上げてみてはいかが。