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 「人気? あまり気にならないね。相撲は勝てばいいんでしょ。負けたら人が認めてくれないもの」。元横綱北の湖(故人)がインタビューで話している(北出清五郎著「大相撲への招待」)。

 ふてぶてしい表情で「憎たらしいほど強い」と称され、決して人気は高くなかったが、幕内優勝は24回を数えた。「勝ち」へのこだわりは角界をけん引する横綱の使命と考えていたに違いない。

 絶対的な強さを誇った横綱がまた土俵を去る。第一人者として長く活躍した白鵬が現役引退の意向を固めたという。幕内1093勝、優勝45回など数々の大記録は当分、破られることはないだろう。

 来日当時は62キロの細身だった。少年時代にモンゴルの草原を馬に乗って駆け回り、強靱(きょうじん)な足腰と全身のばね、バランス感覚を養った。人一倍の稽古と研究心で「組んで良し、離れて良し」の理想を体現した。

 八百長問題など不祥事に揺れた角界を一人横綱として支えた時期もあった。一方、かち上げなどの取り口や土俵での態度で物議を醸すことも少なくなかった。最近は右膝のけがに泣いたが、7月の名古屋場所で復活優勝を果たした。品格をかなぐり捨ててガッツポーズする姿には勝利への執念を感じた。

 ライバル不在の中、満身創痍(そうい)の状態でモチベーションを保つのは難しかったのだろう。36歳の大横綱の引退で大相撲の一つの時代に幕が下りた。