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 三三九度の儀式は室町時代に始まったとされる。婚礼で男女が大中小の三つの杯をそれぞれ三口で飲み干す。陰陽道(おんみょうどう)で縁起のいい奇数の三を三つ重ねて、最上級のめでたさを表現している。

 こちらも三を重ねるしきたりと無関係ではないかもしれない。肝付町の四十九所(しじゅうくしょ)神社に約900年前から伝わる高山流鏑馬(やぶさめ)である。射手は三つの的が立つ参道の馬場で3回馬を走らせ、計9本の矢を放つ。

 今年も例年通り地元の中学2年生の中から射手が選ばれた。先月中旬から毎日夕方、参道で馬を走らせる稽古を重ねている。地元の人たちも馬場に集まって、周囲の交通整理などを手伝う。

 今月17日の本番は昨年に続いて無観客での実施が決まっている。新型コロナ対策とあれば仕方あるまい。それでも、保存会員の熱意は変わらない。口づてで守られてきた決まり事を、若き担い手に丁寧に伝えている。

 その中に、9本全てが的中しそうになったら最後の1本を外すという教えがある。的中の本数が多いほど豊作という吉凶占いの側面もある一方で、最高を極めることにはためらいがあるかのようだ。

 今年、満願を得てしまえば、来年以降は今より良くはならない。幸運は次の世代に残しておこう。保存会員の中には、そんな解釈を語る人もいる。遠慮を忘れず、つつましく生きてきた先人の心に思いをはせつつ、射手の健闘を祈るとしよう。