( 10/12 付 )

 <名も知らぬ遠き島より/流れ寄る椰子の実一つ>。島崎藤村の詩「椰子の実」の一節である。明治30年、愛知県伊良湖岬に流れ着いたヤシの実が創作のヒントとされる。

 黒潮に運ばれたヤシの実に、当時の人は南の島へのロマンをかき立てられたに違いない。奄美でも海岸の漂着物をユリムンと呼び、海のかなたからの贈り物と大切にしてきたが、近年はそんなロマンとは無縁のプラスチック製品が打ち寄せられている。

 知名町の竿(さお)智之さん一家はその厄介者を、住まい近くの浜でほぼ毎朝拾い続けて5年目になる。中学1年の長女りりさんが拾ったごみを分類・記録する夏休みの課題がきっかけだった。

 集まるのはペットボトルやレジ袋、漁具が多いという。りりさんと2人の妹はウミガメやクジラの死骸からもこうしたごみが見つかると知った。美しい海と生物の命を守りたいとの願いが活動を支えている。

 5ミリ以下のプラごみの破片は有害化学物質を吸着し、餌と間違って食べた魚などの体内で濃縮され、生態系を脅かす恐れがある。一家は実物に触れてほしいと微小プラも集め、環境教育用に販売している。

 レジ袋が有料化されてマイバッグは普及したが、環境省の今年3月の調査で使い捨てプラ製品を買わないようにしている人は約3割にとどまる。プラスチックに頼らない社会が実現してこそ、りりさんらの願いはかなう。