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 「琉球嶌真景(りゅうきゅうとうしんけい)」を展示していると聞いて鹿児島市の黎明館を訪ねた。江戸時代後期の奄美の風物を描いた絵巻物である。企画特別展「ほこらしゃ奄美」のために、18年ぶりに沖縄の名護博物館が貸し出した。

 縦42センチ、長さ14メートルの巻物で、京都の四条派の絵師岡本豊彦による11景からなる。題に琉球とあるが、男女一緒の八月踊りや土を盛った大和相撲の土俵などは沖縄にないもので、風景にも奄美の特徴が見て取れる。

 船こぎ競争に沸く群衆や刈り取った糸芭蕉を背負う人の図は、息遣いが伝わるようだ。岡本が島を訪れた形跡はない。では、どうやってこんなにリアルに描けたのだろう。詳細な資料でもあったのか。創作の舞台裏にも想像が広がる。

 絵巻より少し後に書かれた「南島雑話」の挿絵も多数展示している。サタグルマ(砂糖搾り機)やティル(背負い籠)など、描かれた民具を実物と見比べると当時の風景が思い浮かぶ。伝統芸能や祈りの儀式の道具も貴重である。

 奄美に移り住み、日本画に独自の境地を切り開いた田中一村の絵も十数点ある。「アダンと小舟」といった代表作のほか、鉛筆書きのスケッチ画も興味深い。

 「ほこらしゃ」とは奄美の言葉で素晴らしい、誇らしいという意味がある。古くから海を越え行き来した人々の営みは時を重ねて豊かな文化を育んだ。世界遺産となった自然と並ぶ県民の誇りである。