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 心に悩みを抱えた人と数多く接した臨床心理学者の河合隼雄さんが、よく口にする言葉があった。「分かりませんなあ」と「難しいですなあ」である。

 相談者は拍子抜けしてしまいそうだが、関西なまりの語尾は余韻を含み、分からないことを共有し、難しさの密林に一緒に分け入っていく気持ちにさせたという。詩人谷川俊太郎さんが、河合さんの著書「こころの処方箋」巻末に寄稿しているエピソードだ。

 今、悩みや迷いの森で立ちすくんでいる子どもが増えているのかもしれない。2020年度、鹿児島県内の公立小中高校生の不登校は2989人で、過去最多を2年連続で更新した。

 県教委は新型コロナの影響とみる。休校や行事の中止で生活リズムを乱され、登校意欲が湧きにくいという見立てだ。もしそうなら、当分は同じ状況が続きかねない。

 問われるのは、異変を察知する大人の感度だろう。いかに気持ちを聞き出し、次の一歩を一緒に考える信頼関係を築くか。コロナ下の新しい日常に戸惑っているのは大人も同じだが、子どもと向き合う時間を惜しむわけにはいかない。

 河合さんにはもう一つ、「感激しました」という口癖があったそうだ。本や誰かの言葉にしょっちゅう感じ入って、生き生きと反応した。こんな柔らかな感性を忘れずにいれば、森の中の子どもたちに何かヒントを与えられるのではないだろうか。