( 10/29 付 )

 米南部の最貧地域の一つ、ミシシッピ河畔の「不良が最終的に放り込まれる学校」に15歳のパトリックは通っていた。ある男とけんかになり、刃物で刺してしまう。

 教師のミシェルは本を携え、拘置所へ面会に通う。その日々をつづったのが、ミシェル・クオ著「パトリックと本を読む」だ。ページの文字を小指でなぞりながらファンタジーに読みふけるパトリックの姿が印象深い。

 少年は小説の面白さを知り、詩を暗唱して言葉の美しさに触れる。成長は目覚ましかった。ミシェルは「静かな部屋と、たくさんの本と、大人の導きが少しあれば、ここまで伸びる。なのにそれらが与えられる機会はほとんどなかったのだ」と振り返る。

 そんな本を与えられた体験を持つ人は幸せと言えよう。鹿児島県立図書館が昨日まで開いていた「宝本」企画展は、親や友達に紹介されたり、誰かと一緒に読んだりした思い出の本のエピソードを集めた。

 担当した職員の宝本は、サンテグジュペリの「星の王子さま」だという。中学生の時、先生に薦められた。大人になっても何度も読み返してきた。その都度、心に残る言葉や場面が変わる。「大切な1冊がずっと自分を見てくれている気がする」と話す。

 読書週間のさなかだ。今年の標語は「最後の頁(ページ)を閉じた 違う私がいた」。1冊の宝本との出合いが、子どもたちを新しい世界へ導いてくれる。