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 栃木県で取れる鹿沼土(かぬまつち)は通気性や保水性に優れ、植物の栽培に重宝される。園芸をたしなむ人には欠かせない存在だ。その正体は太古の昔に赤城山(群馬県)から噴出した軽石である。

 身近にある軽石といえば、手頃なサイズをかかとの角質落としに使う人もいるだろう。いずれも火山の恵みに違いない。ところが今、奄美群島や沖縄県の全域に大量の軽石が漂着し、漁業者らを困らせている。

 小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火に伴うものとみられ、2カ月ほどかけて西へ1000キロ以上も移動してきた。生コンクリートを流し込んだような港や砂浜は痛々しい。広範囲に分厚く積もった所もあって除去は容易でない。

 故障が怖くて船を出せない。沖縄で養殖魚が死んだ例もある。あまり意識されてこなかった火山災害と言える。政府もようやく安全確保や漁業者支援の検討を始めた。

 研究機関の調査では、噴火の規模は明治以降としては国内最大級で、大隅半島と陸続きになった桜島の大正噴火に次ぐという。沖合には依然、軽石の集まりが確認されており、黒潮に乗ってこれから九州や本州に漂着する恐れがある。冷却水に海水を使う原発への影響も気掛かりだ。

 軽石災害の復旧とともに、本土側でも対策を急がなければ手遅れになる。長い地球の歴史を振り返れば、幾度も繰り返されてきたであろう災いを何とか乗り切りたい。