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 イソップ物語に「ネズミの会議」という寓話(ぐうわ)がある。猫に仲間を次々と食われたネズミの一族が対策を話し合う。さまざまな意見が出る中、身分の高いネズミが提案した。

 「猫の首に鈴をぶら下げれば、近くに来たのが分かる」。みんなが「それはいい考えだ」と賛成したところで長老が立ち上がった。「ところで誰が鈴をつけに行くのか」。ネズミたちは急に黙り込んでしまった。

 衆院選の終盤、鹿児島中央駅前で演説した岸田文雄首相は「日本、鹿児島の活力を取り戻す」と熱弁を振るった。だが、たとえ聴衆が共感できる訴えだとしても、実行するのは決してたやすくないことを寓話は教えている。

 有権者にとって4年ぶりの政権選択選挙は、新型コロナウイルスへの対応や経済対策、安全保障政策が主な争点だった。批判合戦の様相を呈するほど過熱したのは、与野党が多くの選挙区で激しく競り合ったことを物語る。

 自民、公明両党の連立政権が継続するものの、自民は小選挙区で大物議員の落選が相次いだ。9年近く続いた安倍、菅両政権の「自民1強」政治に国民が不信感を募らせ、強権的な手法への戒めを一票に託したのではないか。

 岸田首相は鹿児島での演説で「地方にこそ成長のエンジンがある」と述べて農業や観光の振興を挙げた。選挙戦での主張を実行し、地方が主役の日本を築くことがリーダーの務めである。