( 11/3 付 )

 衆院選の開票速報の合間に報じられたニュースは衝撃だった。電車内を逃げ惑う乗客たち、燃え上がる炎も映っていた。東京の京王線特急で起きた乗客刺傷事件である。

 ハロウィーンの夜、またも逃げ場のない「走る密室」が凶行の舞台となった。無防備な乗客の恐怖はいかばかりだっただろうか。東京に家族や親戚がいる方は人ごととは思えず不安を募らせたに違いない。

 2018年には東海道新幹線で男が20代女性2人をなたで襲ってけがを負わせ、止めに入った会社員が殺害された。今年8月にも小田急線の車内で乗客10人が牛刀で切り付けられた。

 今回の容疑者はこの事件をまねて、「人を殺して死刑になりたかった。ライターオイルをまいた」と供述しているらしい。新幹線の事件で逮捕された男も「刑務所に入るために無差別殺人を計画した」という。いずれも人命を軽視した身勝手な動機で理不尽極まりない。

 首都圏は鉄道が網の目のように張り巡らされ移動には欠かせない。1995年の地下鉄サリン事件をはじめ惨事が発生するたびに手荷物検査の検討など安全強化が叫ばれる。乗客の利便性とのはざまで限界があるとはいえ、対策が急がれる。

 こうした痛ましい出来事がなぜ繰り返されるのか。背景に格差や人間関係のストレスなど社会のひずみがあるとすれば、正していかなければならない。選良の務めでもある。