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 夜の闇に沈む江戸の街で大名屋敷に忍び込み、人は傷つけず金銀だけを奪って貧しい人々にばらまく。ねずみ小僧次郎吉の物語が人気なのは、権力者や大金持ちの不正な蓄財を庶民に分配する痛快さゆえだろう。

 ねずみ小僧と呼ばれた泥棒は江戸時代後期に実在した。ただし、金を配ったとの記録はなく、講談や小説で広まった逸話らしい。義賊や反権力のイメージは、庶民の願望が生みだしたヒーロー像というわけか。

 第2次岸田内閣が打ち出した18歳以下の子どもへの10万円給付が注目を集めている。一律給付にはばらまき批判が噴出し、自民、公明両党は親の年収が960万円を超える子どもを対象から外すことで合意した。

 新型コロナウイルス禍の困窮者対策として、まず子ども支援を柱に据える。歓迎する親は多いはずなのに、全国世論調査の結果を見る限り国民受けは良くない。政府方針が「適切だ」と答えた人は2割に満たなかった。

 安倍政権が昨年実施した国民一律の10万円給付は貯蓄に回す人が多く、経済波及効果は乏しかったとされる。岸田文雄首相は近々、子ども給付も含めて総額30兆円超の大型経済対策をまとめるという。景気は上向くのだろうか。

 肝心の財源も心もとない。気前のいい分配のツケが将来、子や孫を苦しめることにならないか。臨時収入はうれしいが、物語の世界と違って出どころが気になる。