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 女優・上白石萌音さんの初のエッセー集「いろいろ」は素直な目で見つめた仕事や日常をつづる。読書で培った文章力でふるさと鹿児島への愛情も込めた。

 鹿児島市出身と紹介されることが多いが、いちき串木野市で生まれたと明かしている。「わたしの生まれ故郷には海岸がある。どうです、いいでしょう」。久々に訪れた土地で撮影した美しい景色もちりばめられている。

 先週、上白石さん自慢のいちき串木野で、「黎明の地ふるさと短歌大会」の授賞式が開かれた。地元が生んだ歌人・萬造寺斉を顕彰する大会だ。5回目の今回は、小学生から一般まで過去最多の3820点の応募があった。

 <垢(あか)抜けた兄とのZOOMに違和感が変わらぬ声に緊張ほぐれる>。県歌人協会賞を受賞した串木野高校2年の徳永蓮さんは、都会の大学に進学した兄とネットを通じて久しぶりに交わした会話を詠んだ。

 コロナ下で疎遠だった間に髪形も服装も様変わりし、ひと目では誰だか分からなかったという。身構えて話し始めたが、画面の向こうから聞こえてきた鹿児島弁にほっとする。それは親元を離れて暮らす兄も同じだったろう。

 上白石さんは今回の出版のため、鹿児島の思い出の地を巡った。そのとき、幼なじみのお母さんが手作りのふくれ菓子を持たせてくれ、涙腺を刺激されたとある。肩の力を抜いてくれるふるさとの温かさである。