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 先日亡くなった作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんは東日本大震災から約3カ月後、岩手県の被災地を訪ねた。二戸市の天台寺で法話をし、避難所では被災者の肩をもんだり、体をさすったりしながら話を聴いたという。

 つらい体験や愚痴に耳を傾けて、時には一緒に涙を流す。共に過ごし、悲しみを共有してもらうことは、居合わせた人たちにとって大きな癒やしになったに違いない。

 鹿児島県内の浄土真宗本願寺派(西本願寺)僧侶らが毎月オンラインで開く「天文館坊主バー」が目指すのもそんな場所だ。鹿児島市天文館の飲食店内で行っていたが、コロナ禍で昨年5月からビデオ会議システムを使った「飲み会」に切り替えた。

 画面越しに乾杯し、法話のあと5、6人のグループに分かれて会話をする。県内外から参加があり、年齢層も幅広い。病気や恋愛などの悩みを打ち明ける参加者には、僧侶が聞き役に回り、喜怒哀楽に寄り添う。

 コロナの影響で人と対面で歓談することが難しい状況が続く。孤独感や心身の不調を抱えている人もいるだろう。「助けて」と言い合えるような時間は大切だ。

 独りで背負い込まず、笑える時は笑って泣きたい時は泣けば良い。「坊主バー」では、たわいない世間話で笑い合う場面も多いらしい。きょうで20回目を迎える。心の荷物を少しだけ下ろし、ほっとできるような“居場所”になればいい。