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 鹿児島市の会社員、小川達也さんは大の唐揚げ好きだ。7年前、出身の北九州市から鹿児島に転居してきたとき、ほとんどの食堂や居酒屋に唐揚げがあることに驚く。

 食べ歩きに興じ、訪れた店は400を超えた。量や盛り付け、独特のジューシーな味わいをチェックし、月に1回「からあげ通信」を発行している。100号を超えたというから筋金入りだ。

 養鶏王国ならではの食文化なのかもしれない。鹿児島県はブロイラーも採卵鶏も全国トップ級の飼育数を誇る。県は黒牛、黒豚に次いで黒さつま鶏を第3の特産品に育ててきた。

 その王国が激震に見舞われている。出水市の2養鶏場で鳥インフルエンザが確認され、4万7200羽が殺処分された。1シーズンに2カ所での発生は初めてという緊急事態だ。防疫対策を徹底し、感染の広がりを食い止めなければならない。

 生産者からは、新型コロナウイルスと混同されるのではないか、と風評被害を心配する声も出ている。農林水産省によると、鶏の肉や卵を食べて人に感染した例は国内では報告されていない。消費者には冷静に対応してもらいたい。

 鶏肉は焼いても煮ても歯ごたえが良く、卵は和洋中いずれにも欠かせない料理の必需品である。間もなくやってくるクリスマスや年末商戦では、さらに需要が増す。生産者の心情を思えば、一刻も早い収束を願わずにはおれない。