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 抑えた色調の画面に男が1人、小さな木船で黙々とつちを振るう。吉井淳二の「舟をつくる」に、ひたむきに制作に打ち込む画家の姿が重なった。福岡県の久留米市美術館で開催中の「大地の力」展で見た。

 九州の洋画の系譜をたどる展覧会は、黒田清輝をはじめ、鹿児島ゆかりの10人を取り上げている。学芸員の佐々木奈美子さんは、吉井の作品に海老原喜之助の代表作「船を造る人」を連想する。

 今回展示はないが、海老原は鮮やかな青空を背景に船の竜骨と人物を描いた。構図も色も対照的だが、ともに美を追求していく決意を感じるという。旧制志布志中学校からの盟友ならではの響き合いだろう。

 2人が立ち上げた南日本美術展が鹿児島市の黎明館と市立美術館で開かれている。戦後間もない1946年の船出から、美術を志す若者たちを海老原は強烈な個性で叱咤(しった)し、吉井は優しいまなざしで説いた。「南日本美術学校」と呼ばれたゆえんだ。

 佐々木さんは昨年、初めて会場を訪れて衝撃を受けた。高校生と高齢の男性が作品を語り合うなどあちこちで美術談義が交わされ、活気に満ちていた。「まさに談論風発。海老原と吉井の情熱は受け継がれ、根を張っている」。

 今年の第76回展には県内外から438点が寄せられ、64人が初めて出品した。郷土の先達がつくった船は、新しいこぎ手を加えながら力強く航海を続ける。