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 隣に住む祖父が飼っていたポニーに乗ったのは幼稚園の頃だったという。その祖父から手綱のつかみ方など手ほどきを受け、鹿児島神宮の初午(うま)祭や串木野浜競馬で騎乗したこともある。

 名古屋競馬場のレースで先日、中央・地方を通じて国内女性騎手で初めて通算1000勝を達成した宮下瞳さんである。「息子に『ママやったよ』と伝えたい」。3馬身差の会心のレース運びで偉業に花を添えた。

 鹿児島市の武岡中学校を卒業し、デビューした18歳で初勝利を挙げた。結婚して2011年に一度引退。2人の息子を出産し主婦として生活していたが、現役時代の写真を見た長男に「乗っているところを見たい」と言われ、一念発起した。

 体をつくり直し、騎手免許を再取得する試験勉強にも打ち込み、16年に復帰した。子育てと騎手を両立するため、午前1時に起きて馬を調教するなど過酷な生活を続けた。快挙の陰には、並々ならぬ努力の積み重ねがあっただろう。

 常に危険と隣り合わせの職業で、これまで女性騎手は出産したら引退してきた。だが落馬し骨折しても、退院するとすぐ調教に行くなどタフさと負けん気で試練を乗り越えてきた。

 小学生の息子とレースに出るのが願いという44歳。「出産してもまた乗れるという道筋をつくれたかな」。ママさんジョッキーの先駆者として競技の世界に新しい風を吹き込んだのは間違いない。