( 11/27 付 )

 山にこもって厳しい修行を積む修験道に「胎内くぐり」という儀式がある。岩の小さな隙間や穴をくぐり抜けることで、生まれ変わって新たな悟りの境地に到達する「擬死再生」を表現しているそうだ。

 狭い場所を通過してパッと視界の開けた場所に出る。その瞬間の新鮮な気持ちなら覚えがある。例えば高台にある神社の参拝。木々に覆われた急な階段に息を切らしつつ明るい境内にたどり着くと、ちょっと特別な場所に来た気がする。

 鹿屋市上祓川町の瀬戸山神社は、まさにそんなたたずまいだ。樹齢100年を超えるスギ林に囲まれて薄暗い83段の石段を上っていくと、1段ごとに日常と隔絶された領域に踏み込む感覚になる。上り詰めると拝殿の鮮やかな朱が目に飛び込んでくる。

 この建物はつい先日完成したばかりだ。元の拝殿は5月の突風で倒れた大木に押しつぶされてしまった。再建費用の約300万円は、人口減少が進む地区の氏子だけで工面できる額ではなかった。

 ところが、事情を知った祓川地区の出身者を中心に支援が相次いだ。たとえ地元に縁はなくても高隈山の山岳信仰につながる神社を気に掛ける人は多かったようだ。寄付した人は千人以上に及び、再建が実現した。

 拝殿が生まれ変わった喜びとともに、住民の心には千人分の善意が刻まれた。過疎に沈みがちな集落への温かい励ましになったに違いない。