( 11/30 付 )

 鹿児島市の繁華街を歩いていると、サツマイモの甘く香ばしい匂いが漂ってきた。店までまだ遠かったが、風向き次第でマスク越しでも香りが届くのかもしれない。

 先日の日曜日の夕方、山形屋の焼き芋店には30人余りが列をつくっていた。子ども連れやお年寄りらが列に次々と加わり、焼き上がりを待っていた。持ち帰って、どのような表情で頬張るのか。思い浮かべるだけで心も温かくなる魅力が焼き芋にはある。

 そんな冬の風物詩に不安なニュースが影を落としている。県内で基腐(もとぐされ)病による被害が拡大しているからだ。カビが引き起こし、感染すると地面近くの茎が黒くなり、茎全体やイモを腐らせる。特効薬もなく厄介である。

 この時季、県産の市場入荷量は例年の半分以下にとどまっているという。中でも全国的に人気の高い種子島特産の安納芋の被害は深刻だと聞く。昨年も被害を受けてサトウキビへの転作が進むなど作付面積そのものが減っているため、入荷量は極端に少ないらしい。

 鹿児島市内の物産館には、小ぶりながら多彩な品種の県産サツマイモが手頃な値段で並び、少しほっとした。とはいえ、焼き芋だけでなくお菓子や焼酎の原料になるなど用途は幅広く、今後が心配される。

 あすから師走。今週は冷え込む予報が出ている。郷土が誇る身近な「スイーツ」を味わいながら農家らの苦労にも思いを巡らせたい。