( 12/4 付 )

 わが道は一(いつ)以(もっ)て之(これ)を貫く。「論語」にある孔子の言葉である。「私は一念を貫いて生きてきた」といった意味だろう。孔子にとって「一念」とは「忠恕(ちゅうじょ)」、つまり真心や思いやりのことだった。

 そう言い切れる人はなかなかいまい。だが、福岡市の非政府組織「ペシャワール会」現地代表だった中村哲医師がもし言うならば異論はない。アフガニスタンで凶弾に倒れてからきょうで2年になる。

 1984年、医療支援のために赴任したパキスタンで一帯住民を貧困から救うには干ばつ対策が急務と気付く。「100の診療所より1本の用水路」を合言葉にひたすら井戸を掘り、用水路を造った。

 米中枢同時テロ後の2001年10月、参考人として出席した国会での発言が印象的だった。「アフガンへの自衛隊派遣は有害無益」。一部与党議員が反発し、取り消しを求める声まで上がった。

 米国主導の軍事力による「テロとの戦い」に乗り遅れまいと意気込む人にとって、現地住民との信頼関係の大切さを説く発言はきれいごとに聞こえたのだろう。それでも中村さんはひるまず、行動で示し続けた。

 米軍は今年8月、戦乱で荒れた国を放置してアフガンから撤退し、イスラム主義組織タリバンが復権した。多くの国は支援再開の在り方を決めかねている。中村さんの足跡をたどれば、丸腰の人道支援という一本道がまぶしく浮かび上がる。