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 子どもの無垢(むく)な言葉に、はっとさせられることがある。<こわいをしって、へいわがわかった>。6月の沖縄全戦没者追悼式で、地元の小学2年徳元穂菜(ほのな)さんが朗読した詩がそうだった。

 反戦画家の丸木位里(いり)・俊(とし)夫妻の大作「沖縄戦の図」を家族で見たことが詩作のきっかけという。国内唯一の地上戦となった沖縄戦体験者の証言を基に、戦場を逃げ惑う住民や集団自決などの惨状が描かれる。

 宜野湾市の佐喜眞美術館に展示される絵は構図といい色調といい、おどろおどろしい。前に立つと死者の魂が語りかけてきそうだ。徳元さんは怖くなって母親に体を寄せ、伝わってくるぬくもりに安心感を覚えた。<これがへいわなのかな>と。

 美術館を一歩外に出れば、米軍のフェンスが張り巡らされている。沖縄だけではない。基地や訓練のある風景は鹿児島でもじわりと広がる。遠くなったはずの「戦争」の2文字を意識し始めた人は少なくあるまい。

 詩はこう続く。<せんそうがこわいから/へいわをつかみたい/ずっとポケットにいれてもっておく/ぜったいおとさないように/なくさないように/わすれないように>。

 昨今の情勢を踏まえれば防衛力強化は避けられないとしても、平和を維持していく手段は装備だけではなかろう。きょうは日米開戦の日。81年前の苦い歴史をかみしめ、ポケットにほころびがないかも確かめたい。