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 つえを突きながら、ゆっくりと小学校へ歩く。おとといの朝も児童らの笑顔を楽しみに家を出たのだろう。しかし数分後に大阪府北部を襲った地震は、通学を見守るお年寄りの命をも奪ってしまった。

 大阪市東淀川区の安井実さんは10年以上、通学路に立ってきた。80歳。左目は視力を失い、ひざも悪かったようだ。それでも子どもが大好きで「自分も元気をもらえる」と、天気が悪い日も児童への「おはよう」を欠かさなかった。

 近所では「おっちゃん、こんにちは」と声を掛けられ、慕われていたという。「今まで見守っていただきありがとうございました」。ブロック塀が倒れた現場にはきのう、児童らの思いを代弁するような手紙が供えられていた。

 「同じ活動をしている者として、気の毒としか言えない」。鹿児島市の宮奥森明さんは声を落とす。鴨池小学校の登校の見守りを33年間続けている。無念の死を遂げた安井さんを思いやり、「私は72歳になるが元気なうちは続けていきたい」と思いを新たにした。

 登下校中の安全確保対策として、全国の小中学校の8割に近い2万3000校以上が、見守り活動などを行っている。ボランティアで参加する高齢者も多いそうだ。

 今回の地震では、登校途中だった小学4年生も犠牲になった。通学路はもちろん、安心安全な街づくりに向けて対策を急ぎたい。悲劇を繰り返さないために。