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 辛辣(しんらつ)なタイトルが胸にぐさっと突き刺さる。公開中の映画「終わった人」は、定年を機に世間から「終わった」という烙印(らくいん)を押された男性が主人公だ。

 夢なし、趣味なし、居場所なし。肩書や名刺を失った毎日がなんと空虚なことか。主人公は「定年って生前葬だな」とつぶやく。将来のわが身と重なり、暗い気持ちになる。

 日本は平均寿命が80歳を超え、4人に1人が65歳以上の超高齢化社会である。60歳で定年を迎えるとして残り20年以上ある。男性の問題だと捉えがちだが、定年まで働く女性も増えた今、社会全体の関心事といえる。

 25万部を超えるベストセラー「定年後」(中公新書)に終わらないためのヒントを見つけた。著者の楠木新さんは60歳から後期高齢者手前の74歳までを「黄金の15年」と呼び、自分らしい生き方を取り戻す機会だと説く。

 まず子どもの頃の夢や特技を掘り起こし、これまで培った能力を見直す。現役時代に新たな取り組みをスタートさせ、役に立てそうな場を探しておくことも大切だという。都市部に比べ、地方ではまだまだ“若者”扱いされる60代。活躍の場はありそうだ。

 楠木さんは定年後の目標を「いい顔で過ごすこと」とアドバイスする。定年を終わりではなく、始まりの準備を整えて迎えられるといい。いい顔をして、世間から「終わった人」などと言わせないぐらいの気概を持ちたい。