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 「これまで核戦争が起きなかったのは賢明な指導者のおかげではなく、運が良かっただけだ」。昨年のノーベル平和賞授賞式で核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のフィン事務局長が述べた言葉だ。

 ICANが制定を後押しした核兵器禁止条約が国連で採択されて間もなく1年となる。残念ながら、核を巡る状況はあまり変わっていない。長崎大の核兵器廃絶研究センターは先日、6月時点の世界の推計核弾頭数を約1万4450発と発表した。

 前年に比べて約450発減ったが単純には喜べない。保有国は核兵器の高性能化を進めているからだ。米国は2月、新核戦略指針「核体制の見直し」で「使える核兵器」と称される小型核の開発を盛り込んだ。

 米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化に1歩踏み出した。歓迎すべきだが、核弾頭の数で見ると北朝鮮は10~20発とされる。ロシアが約6850発、米国は約6450発を保有していることも忘れてはならない。

 平和賞授賞式では、13歳のときに広島で被爆したサーロー節子さんも演説した。「私の愛する都市は1発の爆弾で消滅した」。たった1発で人々の命を奪い、暮らしを悲劇に陥れる兵器を人類はどれだけ持てば気が済むのだろう。

 核保有国と核の傘の下にいる国の「賢明な指導者たち」はわかっているだろうか。「運のいい」時代が永遠に続く保証はどこにもないことを。