( 7/3 付 )

 ロシアの作曲家、チャイコフスキーの作品に「1812年」というタイトルの曲がある。ロシアに侵攻したナポレオン率いるフランス軍が、寒さや飢えに苦しめられ敗走した史実を題材に作曲された。

 ロシア正教の聖歌やフランス国歌の「ラマルセイエーズ」の旋律も織り交ぜながら一進一退の戦況が巧みに描かれる。最後はロシアの勝利を祝って教会の鐘や大砲の音まで鳴り響く。壮大なスケールに圧倒される。

 「1812年」がナポレオンのロシア遠征の年なら、「1868年」は日本の近代国家幕開けの年である。鹿児島交響楽団が今度の日曜、明治維新を成し遂げた年にちなんだ曲を集めて定期演奏会で披露する。維新150年にふさわしいユニークな企画だ。

 タクトを振る鹿児島市出身の海老原光さんは「鹿児島人にとって、ついこの間のように身近で大事な維新の年に、こんな曲が作られていたという、歴史の縦と横がつながる瞬間を共有してほしい」と話す。

 チャイコフスキーがこの年に完成させたオペラ「地方長官」の序曲と、オーストリア生まれのブルックナーの交響曲第1番が演奏される。交響曲は世界初演が行われた年にあたり、鹿児島で演奏されるのは今回が初めてとみられる。

 どちらもなじみ深い曲ではないが、150年の時に思いをはせながら耳を傾ければ、世界の中の日本の姿が見えてくるかもしれない。