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 1996年に公開された映画「デッドマン・ウォーキング」は刑務所に収監された死刑囚の心理を描く。名優ショーン・ペン演じる死刑囚は、カップルを惨殺した罪を否認し続ける。

 修道女に助けを求め、献身的な支援を受けるうちに変化が表れる。執行直前に罪を認めて、遺族への謝罪の言葉を述べるのだ。改悛(かいしゅん)の情をたたえ、悲しみに満ちたペンのまなざしが胸に響く。

 こちらは何も真相を語らぬまま最期を迎えたという。オウム真理教教祖の麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚の刑が執行された。95年の逮捕から23年がたつ。未曽有のテロ事件の首謀者は、無罪を主張した一審途中から沈黙を続けた。

 地下鉄サリン事件など一連の犯行の犠牲者は29人、重軽傷者は約6500人に上る。遺族や被害者は「執行は当然」「一つの区切り」と冷静に受け止める。その一方で「真実に迫ることができなくなって残念」と悔しさもにじませる。

 元オウム幹部6人の死刑も執行された。高学歴のエリートらがなぜ殺人を勧める教義に洗脳され、数々のテロを引き起こしたのか。宙ぶらりんのまま事件の風化と教祖の神格化への懸念が強まる。

 多くの人生を狂わせた教祖に改悛の情が見られぬまま、平成の大事件に幕が下ろされていく。刑の執行とともにテロへの不安が消えたわけではない。事件が投げかけた問いに、まだ答えを見いだせずにいる。