( 11/16 付 )

 その製品が一躍話題になったのは、関東大震災の揺れにも耐えて壊れなかったからだという。大阪で創業して7カ月、東京で取引を始めたばかりの頃の「虎印魔法瓶」である。

 力強い名に恥じず、「納品した100本すべてが無傷で残った」と現在のタイガー魔法瓶がホームページで紹介している。被災者に温かい飲み物を提供するのに重宝したのかもしれないと想像が膨らむ。

 1世紀近い歳月を経て、魔法瓶の断熱技術は宇宙を旅するまでに進化した。国際宇宙ステーションから試料を持ち帰った小型カプセルである。生活に身近な技術が生かされたと聞けば親しみが湧く。

 カプセルは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発した。大気圏への突入で2000度の熱と衝撃にさらされながら、内部の温度を一定に保つことができるそうだ。カプセルを使った日本初の回収実験の成功は、人が乗る宇宙船につながる可能性を秘める。

 カプセルを運んだH2Bロケットは種子島で打ち上げられた。今年は現地から初のロケットが飛び立って50年の節目。今やモノを運ぶ力は飛躍的に向上し、大学や民間企業までが衛星や実験機器を宇宙に送り出している。

 JAXAの担当者が「宇宙開発の一つの壁を越えた」と評する成果である。宇宙を往来する技術の実現はそう遠くないかもしれない。種子島と内之浦に射場を持つ古里が誇らしくなる。