( 12/13 付 )

 街は緑と赤のクリスマスカラーに染まる。ユーミンことシンガー・ソングライター松任谷由実さんの名曲「恋人がサンタクロース」が気分を盛り上げる。年の瀬を彩る定番の一曲といえよう。

 「今夜8時になればサンタが家にやって来る」の詞に、「いつか私も」と胸をときめかせた女性は多いに違いない。サンタはもちろん彼氏である。聖夜を恋人同士で過ごす日に仕立てたのは、この曲の影響が大きいのではないか。

 1972年にデビューしたユーミンは、経済成長とともに生活が欧米化し、変わっていく女性の心理を巧みにすくい上げてきた。作詞のために喫茶店で客の会話に聞き耳を立てたという逸話もあるほどだ。

 先週、日本人の新たな心象風景をつくったとして菊池寛賞が贈られた。「私の名前が消え去っても歌だけが残るのが理想です」。受賞の言葉に、時代を色濃く映す音楽を常に発信してきた自負がうかがえた。

 「ルージュの伝言」「ひこうき雲」といった40年前の曲がジブリ映画に使われ、子どもたちにもなじみ深い。たとえ詠み人知らずになったとしても次代に歌い継がれるだろう。

 エッセイスト酒井順子さんは「ユーミンの罪」(講談社現代新書)で、曲の魅力を「演劇性があり、ファンはその舞台に立っているような気持ちになれる」と記した。名曲にはあの日、あの時にいつでも引き戻してくれる力がある。