[安倍氏連続3選] 謙虚に国民と向き合え
( 9/21 付 )

 自民党総裁選はきのう開票され、安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破り、連続3選を決めた。
 総裁任期は2021年9月までの3年間となる。政権が続けば、19年11月には通算で歴代最長が視野に入る。
 国会議員の大多数は早々に安倍氏支持を決めた。総裁選後の人事を見据え、「安倍批判は許さない」という雰囲気さえあった。
 結果は安倍氏の圧勝だったものの、石破氏は選挙後に存在感を示す目安とされていた200票を大きく上回り善戦した。党内に一定の批判票があることを、首相は重く受け止めるべきだ。
 総裁選で投票権を持つ党員・党友は約104万人で、全有権者の1%弱にすぎない。内輪の党首選の結果が、国民の意思を正しく映しているとも限らない。
 再選後のあいさつで安倍氏は「一致協力して新しい国をつくっていこう」と呼び掛けた。
 党内外の批判や異論を真摯(しんし)に聞き、謙虚に国民と向き合ってもらいたい。

■常とう句はいらない
 投票結果は安倍氏が国会議員票の8割以上を押さえ、党員・党友の地方票を合わせて553票となった。
 石破氏は地方票の約45%を獲得し、国会議員票も予想より積み増し、計254票だった。特に地方に現状への不満が渦巻いている表れといえよう。
 国民の視線には厳しいものがある。共同通信社の8月末の世論調査では、安倍内閣を支持する理由で最も多いのは「ほかに適当な人がいない」であり、支持しない理由の1位は「首相が信頼できない」だった。
 総裁選で勝利したからといって、これまでと同様に異論を数の力ではねつけたり、疑問に真正面から向き合おうとしなかったりすれば、国民との意識の乖離(かいり)は広がるばかりである。
 現職が立候補した今回の総裁選は現政権の総括が求められた。安全保障関連法などに見られた強行採決や財務省の決裁文書改ざんなどの不祥事が続き、政権運営のあり方が争点に浮上していた。
 ところが、論戦の機会は少なく、討論会などでも議論が深まったとは言いがたい。
 総裁選にかかわる報道を規制するような動きもあった。
 自民党の総裁選挙管理委員会は新聞・通信各社に対して、インタビューや記事、写真の内容や掲載面積などに関して「必ず各候補者を平等・公平に扱うようお願いする」との文書を出した。
 各都道府県連には、報道機関から寄せられたアンケートなどの取材対応を自粛するよう求めた。
 こうした要請は異論を排する「1強体制」の党の空気を映してはいないか。トップに立つ首相の政治姿勢とも無関係とはいえまい。
 森友、加計学園問題では、安倍氏と近い関係にある二つの学校法人のトップが、首相の存在を忖度(そんたく)した官僚によって優遇され、行政がゆがめられたとの疑惑が、今なおくすぶり続ける。
 安倍氏は「丁寧に説明する」と言いながら、納得のいく説明はしない。与党は安倍昭恵首相夫人ら関係者の国会招致を拒み、疑惑は未解明のままだ。
 再選は一連の問題の免罪符ではない。「丁寧な説明」といった常とう句を繰り返すばかりでは国民の不信感は拭えない。
 石破氏は総裁選で、官邸が中央省庁の人事を一手に握る内閣人事局の見直しや、疑惑は法案や予算審議と切り離し、別の委員会で議論する国会改革を求めた。
 衆院の改革は小泉進次郎党筆頭副幹事長らも提唱している。
 安倍氏はこれらの改革案を正面から受け止め、具体的な議論を始めるべきだ。

■改憲は拙速を避けよ
 安倍氏は総裁選を通じて、第2次安倍政権の約5年9カ月の経済、外交の成果を誇った。看板政策「アベノミクス」で株価や国内総生産(GDP)が伸びたことや、有効求人倍率の上昇、訪日外国人の急増は確かにその通りである。
 しかし、地方への波及は乏しく、企業が稼いだ金は内部にとどまったままだ。
 政策を支える上で重要な財政再建や金融政策についても、具体策が語られることはなかった。
 25年度の基礎的財政収支の黒字化をいかに実現させるのか、早急に道筋を示す必要がある。
 憲法改正について安倍氏は「憲法にしっかり自衛隊を書き込む」と述べ、終始前のめりだった。秋の臨時国会への党改憲案提出を目標とし、次の任期中に改憲を実現させたいと意欲を見せている。
 総裁選後にも「いよいよ憲法改正に取り組む」とあらためて強調し、改憲論議を加速させる意向をにじませた。
 ただ、石破氏が「国民の理解がないままに国民投票にかけてはいけない」と主張したように、多くの国民にとって改憲は喫緊の課題ではない。
 世論調査でも明らかなように、国民の関心は持続可能な社会保障制度など、安心できる暮らしを支える政策である。
 改憲は国家の根幹に関わる重要な問題である。自民党内や公明党にも異なる主張がある。拙速を避け、慎重に取り組むべきだ。