[「強制不妊」法案] 被害者救済には程遠い
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 旧優生保護法下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、与野党の国会議員が救済法案を決定した。
 被害者へのおわびと一時金320万円の支給を柱とした内容である。来月初旬に国会提出し、月内の成立、施行を目指す。
 被害者の高齢化に配慮して救済のための法案づくりを急ぎ、幅広く一時金支給を決めたことは一定の評価ができる。
 だが、7地裁に計20人が起こした国家賠償請求訴訟の請求額は1000万~3000万円台後半で、法案の一時金とは懸け離れている。被害者側が「国」主体の謝罪を求めているのに対し、法案は反省とおわびの主体を「われわれ」として国の責任を明確にしていない。
 弁護団は「自己決定権を奪った旧法は違憲」として明記を求めていたが、違憲性への言及もない。
 被害者側の要望との隔たりは大きいと言わざるを得ない。原告側は訴訟を継続する考えを示しており、問題解決につながるか見通せない。
 旧優生保護法は1948年に制定され、96年に母体保護法に改正されるまで知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などの障害や病気がある人を対象に不妊手術を認めた。
 この間に約2万5000人が手術を受け、うち約1万6500人が強制だったとされる。
 一時金の参考にしたのは、日本同様に不妊手術が行われた被害者への補償として、99年から17万5000クローネを支給したスウェーデンの例だ。物価変動などを反映させて現在価値をはじき出した。
 だが、被害者が心身に受けた苦痛は計り知れない。子を持つ権利を奪われるという不可逆的な被害に見合う額なのか疑問が残る。もっと被害者が納得できる案にするべきだ。
 法案では本人が「同意」したとみられるケースも一時金支給の対象になる。手術記録が残っているのは約3000人分にとどまるが、記録がなくても手続きを経て認められれば一時金が支給される。
 速やかな救済を図るには、プライバシーに配慮しながら被害者の掘り起こしに努め、救済に関する情報が広く伝わるような手だてが必要だ。法案では被害認定の請求は法施行日から5年以内だが、状況に応じて期限を延ばすなど柔軟な対応も求められよう。
 旧法制定から70年以上過ぎ、「優生手術」の条文が削除されてから23年となる。
 国は深刻な人権侵害を繰り返さないためにも、旧法に基づく障害者差別の実態を詳細に把握する努力を続けなければならない。