[裁判員制度10年] 負担軽減へ工夫もっと
( 5/22 付 )

 殺人や傷害致死といった重大事件の審理と判決言い渡しに市民が参加する裁判員制度が、10年の節目を迎えた。今年3月末までに裁判員や補充裁判員の経験者は9万人を超え、1万2000人近くが判決を受けている。
 制度の導入により、性犯罪で厳罰化が進むなど判決に市民感覚が反映されている様子がうかがえる。調書より法廷でのやりとりを重視する「分かりやすい裁判」への転換も進み、制度は社会に受け入れられてきたようだ。
 課題の一つが、増加傾向に歯止めがかからない辞退率である。裁判員候補者に選ばれても仕事などを理由に辞退する人の割合は制度スタートの2009年は53%だったのに、昨年は67%に達した。さらなる定着に向け、より市民が参加しやすい工夫が求められる。
 最高裁がまとめた制度10年の総括報告書によると、尋問した被害者や目撃者ら証人は否認事件でみれば、初年が平均2.4人。それが昨年は4.4人を記録している。
 対して自白事件で書面の調べにかけた時間は11年が平均83.4分、昨年は62.9分。「公判中心主義」にシフトしているのがはっきり分かる。
 裁判は長くなった。事前に争点を絞る公判前整理手続きによって審理をなるべく短くすることになってはいるが、初公判から判決までの期間は初年の平均3.7日から昨年で10.8日にまで延びている。
 それでも、共同通信社が実施した裁判員経験者のアンケートで、判決に市民感覚が「反映された」と答えた人が92%、裁判員を経験して「良かった」と回答した人は98%にも上った。国民の責任感が制度を支えていることの何よりの証しだろう。
 であればこそ、裁判員の負担をできるだけ軽くするために、知恵を絞りたい。アンケートでは会社を休む難しさ、子どもの面倒を見てもらう調整の苦労など、審理への参加と日常生活の両立が難しい、との声が目立った。
 実際、昨年末までに1052人を選任した鹿児島地裁でも、呼び出し状に雇用主らへ協力を依頼する書面を同封したり、選任手続きと初公判の日程を空けて調整しやすくしたりするなど運用見直しに取り組んできた。
 最高裁の総括報告書は「今後も国民の幅広い参加を得るための努力を惜しんではならない」と記す。
 アンケートでは、人を裁く精神的ストレスを感じた人が34%に上った。裁判員経験者や弁護士らは守秘義務の厳しさが主な原因と捉え、「抱えていることを人に言えないと葛藤も解消できない」と法改正の必要性を提言する。
 裁判員制度の充実、発展のために、審理に参加した一般市民の貴重な経験を社会に広く伝え、多くの人に共有してもらう仕組みを考えたい。