[食品ロス削減] 消費者意識が問われる
( 5/25 付 )

 食べ物が無駄に捨てられる「食品ロス」を減らすための食品ロス削減推進法が成立した。特徴は削減へ向けた努力を「国民運動」と位置付け、行政や事業者だけでなく消費者に対する啓発を強く訴えている点だ。
 新法は国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に超党派の議員連盟が法案をまとめ、各党に賛同を呼び掛けた。政府が基本方針案を定めるため内閣府に有識者会議を新設することを盛り込み、自治体には具体的な推進計画をつくる努力義務を課した。
 日本の食品ロスは2016年度推計で643万トンに上り、国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量の2倍にも相当する。このうち一般家庭からの廃棄量は291万トンと半分近くを占める。削減の成果を上げるには、国民の意識改革が不可欠だ。
 大量廃棄社会を変えようとの機運は、00年の食品リサイクル法成立で高まった。納入・販売期限を厳しく縛って消費期限前の廃棄につながっていた食品流通業界の商慣行を見直すなどの取り組みが徐々に広がり、一定の進展があったといえる。
 農林水産省は今年、2月の節分に食べる恵方巻き商戦を前に「需要に見合った販売」を小売団体に要請した。昨年の大量廃棄が問題になったためで、これを受けた事業者側は今後、予約販売制度の導入などで対応する考えだ。
 さらに、ここに来てコンビニ業界も一部で食品ロス削減の流れに呼応する動きを見せている。従来は弁当などの消費期限が近づいても定価販売していたが、購入者にポイントを還元する実質値下げの形で、廃棄を減らす取り組みを本格化させ始めた。
 ただ、外食の現場では依然、盛り付ける量自体を少なくするなどの抜本的見直しに消極的な向きが多い。料理の見た目や食品の鮮度にとりわけ敏感とされる日本の客離れへの警戒感が強いためだ。さらに踏み込んだ対策を取るには、消費者の理解が求められる。
 政府は昨年、家庭の食品ロスを30年度までに00年度比で半減させる閣議決定をした。一般家庭の廃棄量が近年、微増傾向にあるからで、意識を変えて取り組むことが欠かせない。
 地球上で8億2000万人が飢えに苦しんでいるというのに、無駄なエネルギーを使うとともに二酸化炭素を排出して生産、処分する現実が続くのは許されない。世界で13億トンに達する食品ロスは、国際的にも貧困や環境問題の面から解決を訴える声が高まっている。
 先日、新潟で開かれた20カ国・地域(G20)農相会合では閣僚宣言に「食品の損失・廃棄を防止するために市民社会や民間関係者と協力することを奨励」と盛り込まれた。新法のうたう「国民運動」としての食品ロス削減に、一人一人が積極的に参加したい。