[景気判断下げ] それでも「回復」維持か
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 政府は5月の月例経済報告で景気判断を2カ月ぶりに引き下げた。
 4月まで「輸出や生産の一部に弱さもみられる」としていた部分の「一部」を削除し、激化する米中貿易摩擦については「一層注意する」と強い警戒感を示した。当然の見方だろう。
 一方、景気は「穏やかに回復している」との判断を維持した。景気はいいのか悪いのか。玉虫色の分かりづらい報告と言わざるを得ない。
 安倍政権は、景気回復を実績として強調してきた。参院選を控え、景気の変調を認めアベノミクスの失敗という批判が起こるのを避けたい思惑が働いたのではないか。
 米中協議の泥沼化で、中国向け輸出が落ち込むなど日本経済への影響が顕在化している。政府に求められるのは事態の変化に素早く対応し、適切な手を打つことだ。政治的思惑で現状認識を誤ってはならない。
 最近の経済指標は日本経済が変調を来している可能性を示していた。
 今月13日に発表された3月の景気動向指数で内閣府は、景気に関する基調判断を6年ぶりに、景気が後退している可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げた。中国などの海外経済の停滞が輸出に波及し、鉱工業生産が減少したことが響いた。
 20日発表の1~3月期国内総生産(GDP)はプラス成長とはいえ輸出や個人消費、設備投資の落ち込みが顕著に表れた。先行き不透明な中で企業は投資に及び腰になり、家計は所得が伸びないのに社会保障保険料などの負担が重くのしかかる状態が続く。
 月例報告では、企業の設備投資を2年8カ月ぶりに下方修正、生産も引き下げた。公共投資は「底堅い動き」に上方修正し、個人消費は「持ち直している」に据え置いた。
 こうした項目を総合的にみて「回復」維持を判断したというが、どう表現するかは政府の裁量に任される。数値から機械的に基調判断を示す景気動向指数などとの整合性が問われよう。
 政府が景気判断の大幅な修正をためらうのは、10月に予定する消費税増税の延期論拡大を避けたい意図もあるのだろう。企業は増税を織り込んで軽減税率などへの対応を進めており、今からの延期は混乱が大きい。
 ただ、安倍晋三首相は過去2回増税を延期した経緯がある。首相周辺では増税延期と参院選に合わせた衆参同日選論がくすぶっており目が離せない。
 米中貿易摩擦は世界経済の最大の懸案である。紛争が長期化すれば日本への打撃は避けられまい。中国に生産拠点を持つ日本企業には、追加関税がリスクになっている。
 政府は、こうした企業への支援など、政治的思惑を超えた適時適切な政策を講じることが重要である。