[党首討論] 国民の年金不信消えず
( 6/20 付 )

 安倍晋三首相と野党4党首による党首討論がきのう1年ぶりに開かれた。
 野党は、老後に夫婦で年金収入以外に2000万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書問題をただした。だが、安倍首相は「毎月5万円の赤字になるという大きな誤解を国民に与えた」とこれまでの見解を繰り返すだけに終わった。
 共同通信社の最近の世論調査では「100年安心」を掲げる政府の公的年金制度に63.8%が「信頼できない」と答え、自民支持層に限っても同様の回答が過半数に達している。
 安倍首相がこうした不信感に応えたとは言い難い。老後の生活への不安を解消できるよう、国民にしっかりと説明していかなければならない。
 報告書を巡っては麻生太郎金融担当相が「赤字になるとか、2000万円ないと生活できなくなると聞こえるのが問題」として受け取りを拒否した。
 だが、共同通信社の世論調査では、麻生氏の対応について71.3%が「問題だ」と回答。野党支持層にとどまらず、自民支持層の60.3%、公明支持層の66.0%も問題視した。
 党首討論で立憲民主党の枝野幸男代表は「年金制度の安心だけを強調し、国民の不安と向き合っていない」と安倍政権の姿勢を批判した。これに対し安倍首相は「(年金給付の伸びを抑制する)マクロ経済スライドの導入で持続可能な制度になっている」と応じた。
 だが、国民が知りたいのは今の制度が本当に維持できるのか。将来どの程度の年金収入が見込まれ、実際どれくらいの貯蓄が必要なのかということではないか。報告書で生じた疑念や不安を晴らすのが政権の役割だろう。
 国民民主党の玉木雄一郎代表は、年金財政の健全性をチェックする財政検証の早期公表を求めた。検証は5年に1度公表されるが、前提となる経済状況が大きく変化したとも指摘した。
 これに対し安倍首相は「まだ報告は受けていない。政局とは関わりなく、しっかり検証して公表する」と応じたものの、時期は明言しなかった。財政検証は年金持続性の根拠となるだけに早急に数字を示さなければ、議論は空回りするだけだろう。
 そもそも4党首で計45分間だけの討論で議論が深まるのは難しいとはいえ、野党も自らの主張を述べることに時間を費やし、追及は厳しさを欠いた。
 参院選は老後資金問題のほかにも争点は多い。党首討論では取り上げられなかったが、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡って防衛省調査に重大な誤りが発覚した。消費税率の10%への引き上げや憲法改正も論点になろう。
 こうした多くの課題について与野党は活発な論戦を通じて参院選の判断材料を明確に示すべきである。