[2019参院選・与党過半数] 批判票の重み自覚せよ
( 7/22 付 )

 参院選はきのう投開票が行われ、自民、公明両党は改選124議席の過半数を獲得した。与党が訴えた「安定した政治」の継続を国民が支持した結果と言えるだろう。
 2012年12月の第2次安倍政権発足以来、6年半が過ぎた。この間、都市部を中心に雇用環境が改善し、株価も上昇するなど経済は上向いた。
 だが、地方は景気回復を実感できない。東京への一極集中が拡大、人口減少や人手不足は深刻で、明るい展望が開けないままである。
 比例代表や鹿児島など改選1人区で少なくない政権批判票が投じられた。その背景には、こうした地方の不満や、たびたび露呈した「安倍1強」体制といわれる長期政権のおごりがあるのではないか。
 論戦から逃げて、数の力で押し切る政治を国民は望んでいない。反対意見にも真正面から向き合い、議論を尽くすのが政権与党に課せられた使命である。

■年金不安の解消を
 国民が「安定した政治」に期待するのは、山積している課題を早急に解決し、「安定した暮らし」を実現してほしいとの表れに違いない。
 その一つに年金問題がある。95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要だと試算した金融庁金融審議会の報告書を機に老後不安が高まった。
 安倍晋三首相(自民党総裁)は人生100年時代に向けて、賃金の伸びより年金給付を抑える「マクロ経済スライド」を組み込んだ今の制度の持続可能性を主張、年金積立金も大幅に拡大したとしている。
 だが、国民の理解を得られたと判断するのは早計だろう。
 年金財政の健全性を5年ごとに点検する「財政検証」はこれから公表される見通しだ。現行制度を維持できるのか。見直す必要はないのか。議論を深めて国民の不安を解消してほしい。
 消費税増税について与党は社会保障の財源や幼児教育・保育の無償化実現を掲げ、増税の必要性を訴えた。与党が勝利したことで、10月には予定通り10%に引き上げられるだろう。
 ただ、選挙戦を通じてキャッシュレス決済する際のポイント還元など総額2兆円超の景気対策のアピールだけが目立ち、増税の「痛み」はかすんだ。
 実質賃金が伸び悩む中、家計への負担は重く、景気減速の懸念も根強い。増税に踏み切るのなら、社会保障の充実とともに、景気の腰折れ防止と財政再建が両立する方策を探っていかなければならない。
 一方、野党は32の1人区全てで統一候補を擁立、消費税増税反対で足並みをそろえた。年金については「総合合算制度」の導入や積み立て方式への移行などを訴え、老後資金2000万円問題では与党批判を繰り広げた。
 こうした国民の不安や反対が多いテーマに焦点を当てて選挙戦を展開、野党第1党の枝野幸男立憲民主党代表は安倍政権下での公文書改ざんなど不祥事を挙げて「透明性の高い、まっとうな政治」への転換を訴えた。
 だが、擁立・調整作業が遅れた上、共闘の脆弱(ぜいじゃく)さも否めなかった。一定の支持にとどまったのは、実現可能な魅力的な政策を打ち出せなかったからではないか。
 野党各党は、与党を脅かすような勝負に持ち込めなかった原因を分析し、政権と対峙(たいじ)できる体制に立て直す必要がある。

■緊張感を欠く政治
 安倍首相は引き続き安定した政権基盤を手に入れた。悲願とされる憲法改正へどう仕掛けていくのか注視したい。
 首相が「本丸」と位置付ける9条改正には、連立を組む公明が慎重姿勢を示している。国民の間でも機運が高まっているわけではない。横車を押すような強引な進め方は慎むべきだ。
 外交も難題が待ち受ける。北朝鮮の核・ミサイル問題や拉致問題も停滞気味である。北方領土問題を含む日ロ平和条約交渉の決着は見通せず、貿易と安全保障が絡む日米関係は正念場を迎える。日韓関係も急速に冷え込んでいる。いずれも周到な戦略が求められよう。
 政治への関心が薄れてきたことは投票率が低下傾向にあることからもうかがえる。その一因は、政治が緊張感を欠いているからではないか。
 ここ数年、森友、加計学園問題や自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)、厚生労働省の統計不正など民主主義の土台を揺るがす事態が発覚した。だが、行政監視の役割を担うはずの国会は、その機能を果たしているとは言えまい。
 先の国会では1回しか開かれなかった党首討論の在り方を見直すなど国会改革に与野党で取り組むべきだ。特に若い世代を引き付ける政治を実現していかなければならない。