[スマート農業] 「鹿児島モデル」目指せ
( 8/21 付 )

 ロボットや人工知能(AI)を農業に活用する「スマート農業」への期待が高まっている。
 背景には現場の労働力不足がある。農業就業人口は2008年に300万人近かったが、18年には175万人に減少した。高齢化が進み、平均年齢は67歳に迫る。
 多様な担い手の支援と生産性向上を進めないと衰退は避けられない。こうした構造的問題を解決する糸口になるよう最先端技術を生かしたい。
 18年版の「農業白書(食料・農業・農村の動向)」はスマート農業の導入例を紹介している。「生産性の向上や規模拡大、新規就農者への技術継承も実現できる」として、省力化・効率化の切り札と位置づける。
 スマート農業は研究・開発段階から普及段階に入っている。無人で農作業をする自動走行トラクター、自動で水田の水位を管理できるシステム、傾斜地にも対応したリモコン操作の草刈り機など次々と実用化が進む。ベテラン農家の技術といったビッグデータを活用すれば、担い手育成にも役立つに違いない。
 農林水産省は19年度から中山間地や離島など条件不利地を含む40道府県の計69件を対象に実証事業を始めた。生産から出荷までIoT(モノのインターネット)などによる自動化設備を導入し、効果や問題点を明らかにするのが目的だ。
 鹿児島県内からは水稲、畑作、施設園芸、茶、畜産の計5件が採択された。九州最多である。経営効率化の成功例を積み重ね、未来の食と農業を支える「鹿児島モデル」を全国に発信し、先進地となってほしい。
 県は独自の推進方針に基づいて支援する。農業大学校の学生らを対象に講義や実演会を開くほか、ドローンとAIを組み合わせた病害虫・生育診断技術の開発などに取り組む。19年度末までにマニュアルを作成する方針だ。
 スマート化導入が広がっているものの、解決すべき課題は多い。
 一つはコストだ。農機の多くは高額で購入の負担が大きい。二の足を踏む新規就農者や中小規模の農家は少なくないだろう。
 安全確保のための法律や制度の整備も不可欠である。農薬散布などに活躍するドローンを含む無人飛行機の事故も相次いでおり、飛行ルールの厳格化も必要となる。自動運転の農機が走りやすい農道の整備、情報通信基盤の強化なども急がなければならない。
 女性や高齢者、外国人、障害者らの雇用にも道を開くスマート農業である。担い手のすそ野が広がれば、食料自給率の向上、農産物輸出拡大にも寄与するだろう。政府は費用の助成制度の拡充など普及拡大に向け後押ししてもらいたい。